2010年12月26日(日)09:11
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キクとイサム ★★ 社会主義的ヒューマニズムというのは、社会主義的な図式にすべてをあてはめ、人間生活における「その部分」を強引に強調し、さらに「それでもしぶとく生きていく」人間のたくましさとやらいうものを描くことで、階級闘争の未来を感じさせようとしたものなのだろう。今井正という人は、そういった単純な図式が好きなのだろう、というか、当時の知識人たちは与えられた図式を頭のなかに入れ込むことが正しいことと思い込んでいたのだろう。結果的に、現在見ると臭すぎて臭すぎてどうしようもない作品になっている。映画としてまとまっているのはそれなりの技量があるからだろうけれど、その能力が殺されてしまっている。その意味で社会主義といった概念的枠組みの怖さを感じさせる。キクとイサムという触媒によってあぶりだされる人種的偏見や差別を描くことで、被抑圧者を描くという手法、イライラしてくる。
太陽のない街 ★★ 山本薩夫もそうした枠組みにはまり込んでしまっていたのか、と思わせる作品。労働組合という状況設定は、シンプルに階級闘争を描くためのもので、教科書どおりの社会主義映画になっている。北朝鮮あたりで上映したら評価されるかもしれない。 | | |