視点
この作品、昔、映画館でみて、まったく訳がわからず、それでも映像の美しさと音楽がとても気にいって、その後、VHSで、フランス版DVDで、さらにアメリカ版DVDを買ってしまった。別にバージョンによる違いはなく、以前買ったものが見つからないので改めて買ってしまっただけなんだが。今回、数回目に見て感じたのは、カメラの視点ということだった。映画は、直接的には去年の記憶と今年の現実という時間軸を扱っているが、それはカメラの視点がいつの時間のものか、ということでもある。フラッシュバックを使う映画は結構あるけれど、この映画ほど、過去と現在の映像をまぜこぜにしているものは少ない。もちろん意図的にそうしているのだろう。さらに、カメラは誰の目線を表現しているのか、という問題がある。ここがこの映画の難しいところで、誰の視点でもなく、登場人物たちを第三者的な視点から描写しつつ、それが誰かの心象であることを表している。そのあたりを紐解かせているあたり、Alain Resnaisの意地悪いところだろう。もちろん、各カットを分析して、これがいつの誰の視点によるものかを整理するような見方もできるだろうが、映画研究という立場でなければ、その混乱を楽しむというスタンスで良いのだと思う。それにしても、いつも思うのだけど、映画のカメラってのは、いったい誰の視点を表しているんだろう。肝心なところばかり選んで、そこに密着して覗いている姿なきvoyeurなわけだ。そのあたり、Alain Resnaisは皮肉っている、もしくは真面目に問題提起しているのかもしれない。ともかく映像と音楽のマッチングは素晴らしい。