立体眼鏡も入っているというのでamazon.comで買ってみた。DVDは表面が2次元、裏面が3次元。掛けにくい紙枠の赤青眼鏡をつけてさあ出発。ところがどっこい両眼視差を使った立体感の表現を勘違いしているのか、立体感のある場面もあれば、でてこない場面もあり、眼がぐるぐるしてしまって30分で敗退。あとは眼鏡を外して見た。遠近感の表現には特に力を入れた作品で、頻繁に利用される運動視差、強調された線形遠近法など、両眼視差がなくても遠近感を楽しむことができる。その両眼視差だが、制作スタッフは、眼に近いものほど視差が大きくなり、遠方のものは視差がなくなるという基本的な知識が欠落していたのではないだろうか。距離によって視差が異なるというだけの知識から制作しているようで、なんと、遠方のもののほうが視差が大きくなっているカットが結構多かった。何なんだこれは、という印象。通常は視差のついていない字幕が一番手前にでて見えたことから、遠方ほど視差をつけるべきだと勘違いした可能性はある。それならむしろ字幕に常に一定の視差をつけて手前に見せて、安定した両眼視差を提供すればいい。ともかく両眼視差の技術に関しては最悪だった。ただ、運動視差の表現は実に巧みに使われていて、これは奥行き知覚の心理学の授業の教材としては(批判的に見るならば)最適かもしれない。
さて、作品としてはとても面白い。ボタン目玉ってぬいぐるみではおなじみのモノで可愛いはずなんだが、あのお母さんの顔は初っぱなから恐ろしかった。ボタンの色のせいなのか、ともかく目玉がえぐれているような顔はとても恐怖。悪役の魔女だから、それでいいのだけど、だけど顔が恐いと悪人だという観念を植え付けてしまいかねない-昔から子供映画はそうだったけど。ともかく人形の動きもCGもとても良くできていたし、さらに原作がいいからなのだろうか、筋書きもとても良い。単純な恐怖シナリオといえばたしかにそうなんだけど、夢の世界の怖さとか、パラレルワールドの怖さとか、色々な要素が入っている。でも逃げるときは逃げるけど、果敢な主人公コララインの姿勢はとても良い。子ども達に勇気を与えてくれるんじゃないかな。目玉というアイテムを集めて亡者となった親子を救ったり、両親を救ったり、と大活躍だ。コララインにしても黒猫にしても、決して顔を可愛くつくってあるわけじゃないけど、何となく愛らしさを感じる。
とても良い作品だったと思う。両眼視差でマイナス★だけど、それがなければ★五つ。