ジャケットが斬新なので新解釈の現代物であることは予想がついたが、やはり見てびっくりした。こういう解釈もあるし、こういうジゼルの踊り方もあるんだ、と。
まず筋的には、舞台は農村でジゼルがそこの村娘という点は変わりない。しかしアルブレヒトとの出会いが性的な関係を含んでいて赤ん坊までできてしまった、という解釈は、むしろその方が納得がいく。古典バレーの演出での、出会ってから踊りあっているくらいの関係でジゼルが死ぬほどの苦しみを味わうというのはおかしいからだ。そしてジゼルは自殺しない。その代わりに発狂する。このあたりもリアルな解釈だ。第二幕は精神病院になっている。そしてミルタはそこの看護婦長。患者達をコントロールする立場。亡霊となった女達をコントロールする代わりに病院の婦長をもってくるというのも、なかなか了解性の高いあてはめだ。患者達は薬を飲まされ、それでもいろいろな苦しみに悶え踊る。ヒラリオンも見舞いに行くが相手にされず、アルブレヒトが行くとジゼルは燃え上がる。しかし最後は婦長にうながされて病室に戻ってゆく。残されたアルブレヒトは全裸(苦悩をあらわすため全裸になった、ということなのだろうが、男の丸裸はいらないな)のまま村に戻り、ヒラリオンから布をかけられてうなだれる。そんな解釈になっている。このあたり、なかなか面白い。ただ、既にジゼルの筋書きなどを知っていないと辛いだろう。それをオーバーラップさせながら見ると面白い、そんな感じだ。
さて、凄いのは踊りだ。スウェーデンの振り付け師であるMats Ekの振り付けは凄い。ダンサー達も凄いが、ともかく振り付けがいい。現代舞踏の踊り方。体の筋肉を使いまくり、俊敏性を要求し、柔軟性をも要求する。このあたりは実際にこのDVDを見なければ感じられないだろう。言葉ではいいつくせない。特にジゼル役のAna Laguna。この人は顔もだめだし体格もだめ。脚も短いし、筋肉質でごつごつしている。もうバレリーナとしては最悪なんだけど、見ているうちに、そんなことが気にならなくなる。それくらい凄い踊りをする。彼女だけがトーシューズを履いておらず裸足で踊っていたが、それは筋肉の動きを見せるためなのかもしれない。
これは必見といえる。★ひとつ少ないのはAna Lagunaが美女でないから。やはり残念だけど、ジゼルは美しくあって欲しかった・・