世界的な傾向なのかもしれないが、どうも最近の日本はおおらかさを失ってしまったような気がする。何かと自分やその権利を守り、あるいはそれを主張する。安心安全が社会是となったのは悪くないかもしれないが、なにか人間関係がギスギスしてきたような気がする。
発端は交差点でPTAのおばちゃんが旗を振り始めた頃かもしれない。当時はおばちゃんたち、ワンピースを着ていて、前屈みになると襟口からおっぱいがもろ見えになってしまうことなど、ほとんど気にしていない風だった。昭和の光景なんだろう。最近、注意してみると、そういう襟口の服装をしている女性はほとんどいない。「くそ、けちくさい女どもめ」と思う。ヒップボーンでお尻の割れ目が少しのぞいてしまうような服装も流行らなくなった。そんなにガードして何がありがたいんだ、とも思う。だから膝上15cmくらいのスカートをはいた中学生か高校生を見ると、すがすがしささえ感じる。まあ、たしかにワンピとタイツという組み合わせはかわいらしい演出だとは思う。しかしタイツのおかげで生足を拝めることもなくなった。楽しみのない世の中だ。
禁煙ブームもその一つ。喫煙は文化だと思うし、文化になり得たのは、あの煙のにおいが良かったからだ。それなのに「あのにおいが気持ちわるいんです」みたいなヒステリックな発言が多くなり、それが社会正義の仮面をかぶるようになってから、世の中は世知辛くなった。喫煙者は社会の隅に追いやられ、抹殺されようとしている。
これは日本人の集合主義傾向と倫理的仮面傾向によるものだと思っている。それが悪くすると戦時中の婦人会のように、負けると分かっている戦争に、旗降って若者を戦場に送り出したことにつながっている。メンタリティとしては同じだと思う。
その意味では昔からせちがらい日本だったのかもしれないが、日常生活にはまだまだおおらかさは残っていたように思う。それが今はなくなった。団地の自治会の集会なんかにでてみれば、正論と自己主張の嵐に辟易する。
こういう時こそアーティストが活躍すべきだ。以前はやったストリーキングを復活させるとか、少し頭働かせて何かすべきじゃなかろうか。